慰め与えられる詩集NO。2

kasumi-maki2006-07-09

「わたしの心のイエス」永井明著から  その2

そうだ そののとおりだよ と
エスはうなずいた

だが わたしは いま気がついたんですが
鳥だって 百合だって
働いているんじゃありませんか?
鳥は木の枝に巣をつくって
ひなを産み
其のひなを育てるために
せっせと餌を探して運んでくる
それは人間のお百姓が
畑で働くのと同じではありませんか?

なんだおまえは と 弟子のペテロがぎょろり眼玉をむいた
うちの先生にけちをつける気かい!

これ これ
話はしないできくものだ
エスはペテロをたしなめた

百合だってそうですよ
地下に張った根は
葉や茎をのばし花を咲かせるために
水やこやしを
どっと吸いあげている
それは糸紡ぎの労働と同じではありませんか?

なるほど  なるほど
あなたのいうとおりだ
エスはにこにこといった
ちょっと わたしも調子にのって
口がすべったかもしれぬ

じゃ  あなたは
あやまりを認めるんですね?
まあ そうせっかちにならんで・・・
空の鳥も
野の百合も
働くことはたしかだ
しかし

わかりません
はっきりいってください

鳥もはたらく
百合もはたらくが
鳥や百合には
人間のはたらきにつきまとう
虚栄と虚飾がない
鳥と百合は
はたらくことがそのまま遊びだ
たのしみだ
自由だ
天の父にすべてをまかせきっている
わたしたち人間も
そのように
自由に自然に生きようではないか
こせこせ せかせか生きてもはじまらぬ
わたしがいいたかったのは
そのことだったのだが
わかってくれたかね?

わかったともわかったとも
若者はこたえなかった
ただ若鶏のような鋭い眼で
にらみつけていた
エスの前に
ふいに膝をつき
たのみます 弟子のひとりに
してくださいと
深々と地べたに
頭をつけたのだった
  (マタイによる福音書 6章25節以下)
◇この本はずいぶん前に、友人(現在カナダ在住)からいただいた大切な1冊です。