創作:道草電車

kasumi-maki2007-01-28

<童話>
ある晴れた日のことです。いよいよ小学生になるトモちゃんは、エミーちゃんとイチロウ君の三人は、ママとお出かけしました。帰りは、ママたちと分かれて、遅い電車に乗りました。
「出発進行!」ドンドン風を切って電車は走ります。
窓の外を見ていたエミーちゃんが「アッ桜の花が咲いている」と言いました。
運転手さんも窓辺に桜並木を見つけました。
「ここで皆休んで、お弁当にしようよ」と運転手さんがいいました。
皆は桜の木の下でお弁当をひろげました。
「ママの作ってくれたサンドイッチおいしい」お腹のすいていたエミーちゃんは大喜びです。。
運転手さんは奥さんの作ってくれたおにぎり。トモちゃんはママの作った卵焼き弁当。イチロウ君は大好きなハンバーガーを食べました。
みんなみんな、ママの作ってくれたお弁当をアッという間に食べて
お腹もいっぱいになりました。電車はまた走り出しました。
「アッー!あそこに、きれいな川が見える」今度はイチロウ君がいいました。
「ネェー運転手さん、あの川の近くで止めて!」「降りてみていい?」
運転手さんはにっこり笑ってうなづきました。
「ワァー、降りていいんだって」三人は電車から降りました。
みんなは小川のせせらぎのところに行き、川の底をジット見ました。
きれいな水がサラサラと流れて、メダカたちが泳いでいました。
イチロウ君は、せせらぎのところで腕まくりして、川の中に手を入れました。」
春です。水がぬるくてあたたかです。
水が静かに流れての手の平を通り過ぎていきました。
イチロウ君はなんだか不思議な気持ちでした。
それから、しばらく行と、今度はお花のいっぱい咲いている野原に出ました。
トモちゃんたちは電車から降りて、野に咲く花を両手いっぱい摘んで、花束を作りました。
「このお花お母さんにあげよう!」トモちゃんが言いました。
摘んだお花をお母さんに持っていくことにして、三人は家に帰りました。
ところでママたちはどうしたかしら?ママたちは速い電車に乗りました。
「ママは早くお家に帰って、私たちのご飯の支度をしているのよキット!」。
「ママたちの乗った電車は、私たちとは反対の方向へスピードを上げて出て行ったわ」
「今頃はもう、おうちに帰って、洗濯物を取り込んでいるわね。」三人はおもい思いのことを言っていました。
そうです。ツバメ号に乗って帰りました。だからママたちは1時間もしないで自分の家に帰りました。
それから家族皆のために夕食の支度にとりかかりました。
ママたちは3つ目の駅でその電車を降りました。
だから何事もなく無事に家に着きました。
ところが、その電車はそのあとで事故に遭ったのです。
ママたちを下ろした其の電車は、とてもスピーどを出して走ったので、
下り電車と衝突してしまいました。脱線したのです。
「電車に乗っていた人びとは、どうなったのでしょう?」
「それがとっても気の毒!」
四人が座っていた椅子のまま外へ飛び出して、怪我をしました。
救急車が来て病院へ運ばれました。病院へ着いたのにもう手遅れでした。
怪我をした人、アッという間に死でしまった人がいました。
その人たちは偶然その電車に乗っていたのです。とても悲しい出来事でした。
トモちゃん、エミーちゃん、イチロウ君はママたちが先きに降りていたので、
「本当によかった!」と思いました。
「大人たちはどうしてそんなに先を急ぐのかな?」
「その電車の運転手さんはどうなったのかしら?」と心配になりました。
「このお花、病院に届けよう!!」と誰かが言いました。
そうです。子供たちは、野原で摘んだ花束を、病気の人へ届けました。
怪我をしてかわいそうな人びとをお見舞いしました。 
子供の電車は遅い道草電車です。どこでも停まり、好きなものを見つけては
遊び、楽しみ、運転手さんまで一緒になって、遊びました。
道草電車は子供に天真爛漫な心で遊び、傷ついた人へののいたわりの心を育てていました。
大人の電車は速い超特急電車です。目的地を定めて、なるべく停まらない、
いちもくさにスピードを出して進みます。それが、時には、脱線したり、衝突したり、とんでもない事故に遭ったりします。だから運転手さんは、みんなの命を大切に、気を付けて運転します。
トモちゃんたちは言いました。
「子供のうちにみんなで、おもいっきり楽しんで、
宇宙行きの電車にも乗ってみようね。」
「宇宙までは、どのくらいかかって着くのかしら。?」
「いつ行くの? 楽しみね?」、「きっときれいな地球が見えるよね」
みんなでこんど乗る電車は「宇宙行き」と約束しました。