幼い記憶「父の背中で」

kasumi-maki2009-02-17

私は父の背中にいた。宮城県に住んでいた、まだ4〜5才頃のことだったと思う。父は幼い私を耳鼻咽喉科へ連れて行っていた時のことだった。帰り道、父は知り合いの家に寄っていた。どこか知らないが、ガラーンとした店先の様であった。そこで木の丸椅子に座ってカップ酒を飲んで話をしていたようだ。それから帰宅の途中、酔いどれの千鳥足で坂道を登っていた。丁度市役所のあたりに来たとき、両方の道端には排水溝が掘ってあった。父の足がヨロヨロと横へ行くと、背中の私は「そっちは危ないよ」と言う。すると父はまた反対の方へ千鳥足で向かう。すると私は又、すかさず「お父さん、そっちも危ないよ、堰きに落ちるよ」と言っていた。そんな、こんなして父は我が家へたどり着いた。季節はいつ頃だったのだろうか?私は覚えていない。迎えた母は「こんな遅くまで、どうしていたの?子供の足が冷たくなっているでしょう!」と父に注意した。そして私の足を触って、温めながら父の背中から私をおろした。のん兵衛だった父であったが、私を背中におんぶして、耳治療の為病院へ通ってくれたのだと思う。多分妹がいたために母が私を連れて行くことは出来なかったのだろう。 「負うた子に道を教えられ」のことわざが思い浮かぶ目に映るような情景として私の心の中にはっきりと残っている。